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相続・遺言

遺言書も覆す「遺留分」とは?遺された家族の生活を守る最強の権利【第20回】

高齢者等終身サポート専門行政書士の森です。

相続の準備として遺言書を作成する方が増えていますが、実はその遺言書の内容であっても、完全に無視できない「最強の権利」が存在します。それが、今回テーマとする「遺留分(いりゅうぶん)」です。

遺言書に「全財産を愛人に渡す」「特定の長男だけにすべて相続させる」と書かれていても、遺された配偶者や子には、最低限の生活を守るための取り分が法律で保障されています。この権利を知っているかどうかで、相続トラブルの行方は大きく変わります。

本コラムでは、遺留分の基本的な知識から、具体的な計算方法、そして何よりも大切な「請求の期限(時効)」について、深く掘り下げて解説します。

1.遺留分とは?遺言の自由を制限する家族のセーフティーネット

遺留分とは、亡くなった方(被相続人)の財産を相続する際に、配偶者や子などの一定の相続人に対して、法律上最低限保障されている遺産の取り分のことです。例えば、「全財産を長男に相続させる」という遺言書があったとしても、配偶者や次男は、長男に対して「最低限の取り分は渡してください」と金銭の支払いを請求する権利があります。

遺言の自由と生活保障のバランス

この制度は、以下の二つのバランスを取ることを目的としています。

・被相続人の財産処分の自由(遺言の自由)

・遺族の生活保障と相続人間の公平性

被相続人が生前に築いた財産は、多くの場合、家族の協力があってこそ形成されたものです。極端な遺言によって、残されたご家族が生活に困窮したり、深刻な対立が生まれたりすることを防ぐための、法的なセーフティーネットだと言えます。

法定相続分との決定的な違い

遺留分と似て非なるものに「法定相続分」がありますが、この二つは明確に異なります。法定相続分は遺言書で変更可能な目安の割合ですが、遺留分は遺言書の内容にかかわらず奪うことができない、より強力な権利です。

2.遺留分を請求できる人・できない人の明確な線引き

遺留分は、すべての相続人に認められているわけではありません。請求できる「遺留分権利者」の範囲は厳格に定められています。

遺留分権利者とその優先順位

遺留分権利者は、被相続人との生活上の結びつきが強い以下の人々に限られます。配偶者は常に遺留分権利者となります。第1順位の子(直系卑属)(孫などの代襲相続人も含む)も常に遺留分権利者となります。

第2順位親(直系尊属)は、相続人に子や孫がいない場合に限り遺留分権利者となります。そして、兄弟姉妹には遺留分はありません。

兄弟姉妹には遺留分がない理由

相続において非常に重要であり、誤解されやすいのが、被相続人の兄弟姉妹には遺留分が認められていないという点です。兄弟姉妹は法定相続人にはなれますが、遺留分制度が生活保障を主な目的としているため、近しい家族に比べて生活上の結びつきが弱いとみなされ、保護の対象外とされています。したがって、遺言で財産を一切受け取れなくても、兄弟姉妹は遺留分を主張することはできません。

3. 遺留分の計算方法と複雑な「みなし相続財産」

ご自身の遺留分が具体的にいくらになるのかを知るには、複雑な計算が必要です。

総体的遺留分の割合

まず、遺産全体に対して遺留分として確保される割合(総体的遺留分)は、相続人の組み合わせで決まります。直系尊属(親・祖父母など)のみが相続人の場合は、遺産の3分の1、それ以外の場合(配偶者や子が含まれる場合)は、遺産の2分の1、となります。この総体的遺留分を、各権利者がそれぞれの法定相続分の割合に応じて分け合い、個別の遺留分額が算出されます。

計算の注意点

生前贈与も加算される「みなし相続財産」計算で最も注意が必要なのが、遺留分の基礎となる財産の確定です。単に亡くなった時の財産だけでなく、特定の生前贈与や遺贈も加算されます。これを「みなし相続財産」と呼びます。特に、相続人への特別な生前贈与(特別受益)は、原則として相続開始前10年以内に行われたものが加算対象となるため、正確な情報収集と複雑な計算が必要となります。生前贈与の有無や金額によって、遺留分の額は大きく変動するのです。

4. 最も恐れるべき落とし穴~「時効」と迅速な行動の必要性

ご自身の遺留分が侵害されていると分かった場合、権利を実現するためには「遺留分侵害額請求」という法的手続きを行う必要があります。この手続きで最も恐れるべきは、時効です。

厳格な二つの期限~「知ってから1年」に要注意

遺留分侵害額請求権には、以下の二つの期限があり、どちらか早い方が到来した時点で権利は完全に消滅します。

・遺留分の侵害を知ってから1年

遺言書の内容を知り、自分の遺留分が侵害されているという事実を知った時から1年以内に行使しなければなりません。

・相続開始(被相続人が亡くなった時)から10年

たとえ侵害の事実を知らなかったとしても、相続開始から10年が経過すると権利は完全に消滅します(除斥期間)。

特に「知ってから1年」という期間は非常に短く、仕事の忙しさや親族間の感情的な対立などで対応が遅れ、権利を失ってしまうケースが後を絶ちません。

時効を止めるための具体的な初動

時効を中断させる最も確実な方法は、内容証明郵便を使って相手方に対し、遺留分侵害額請求の意思を明確に伝えることです。これにより、請求権を行使したという法的な証拠を確実に残し、時効の進行を食い止めることができます。この初動の速さが、問題を解決できるか否かの最大の分かれ道となります。

5. まとめ

遺留分は、遺された家族の生活を守るための正当な権利です。しかし、計算の複雑さや、1年という厳しい時効という問題があるため、当事者だけで対応するのは非常に困難です。

遺留分トラブルを避けるための行政書士サポート

・遺言書作成サポート

遺留分を正確に計算し、それを侵害しない「争族」を生まない遺言書の作成を支援します。なぜそのように分けたのかという付言事項を添えることで、相続人の納得感を高めます。

・生前贈与の調査

みなし相続財産となる特別受益の有無を調査し、正確な遺留分額の算出をサポートします。

・迅速な対応

「時効」を意識した速やかな初動対応(内容証明の準備など)について、法的な観点からアドバイスを行い、お客様の権利が消滅してしまうのを防ぎます。

「遺言書の内容がわかりにくい」「自分の取り分がいくらになるか知りたい」「時効が迫っていて不安だ」という方は、手遅れになる前に、ぜひ一度、高齢者等終身サポート専門の当事務所にご相談ください。初回相談は無料です。ご自宅訪問での相談も承ります。

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