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相続・遺言

相談者の状況に合わせて選ぶ「最適解」~あえて「自筆証書遺言」を勧めた事例【第25回】

高齢者等終身サポート専門行政書士の森です。

遺言書のご相談にお越しいただいた方へ、行政書士が一般的に強く推奨するのは「公正証書遺言」です。公証役場で公証人が作成するため、形式不備の心配がなく、原本が保管されるため紛失・偽造のリスクが最も低いからです。

しかし、本当にその方法がご本人様やご家族にとっての「最善」でしょうか?今回は、あえて一般的な推奨とは異なる「自筆証書遺言」をお勧めし、スムーズな解決に至った事例をご紹介します。

事例:余命宣告を受けた父と、手続きの長期化を懸念する家族

ご相談に来られたのは、お父様の相続人となるご家族の一人(長男様)でした。遺言書作成の対象となるお父様は、残念ながら癌により余命宣告を受けている状況でした。

推定相続人には、お父様の配偶者(母)、ご相談者様ご自身(長男様)、そして長年音信不通となっているお姉様がいらっしゃいます。

ご相談者様は、お父様の財産が現預金で1000万円未満と比較的小額であるにもかかわらず、相続開始後の手続きが長期にわたってしまうことを強く懸念されていました。特に音信不通のお姉様との協議を考えると、遺言書で意思を明確にしておく必要性が高い状況でした。

「公証役場は面倒だ」という父の頑なな抵抗

遺言書作成の必要性は高いものの、問題はお父様の強い抵抗でした。お父様は病気になる前から、「公証役場なんてめんどうだ」「俺が死んでから好き勝手にしたらええけど、生きているうちに遺言書は書かない」と、作成に対して一貫して消極的でした。

このままでは、お父様の想いを形にできず、残されたご家族が相続手続きで大きな負担を抱えることになりかねません。

形式ではなく「実現可能性」を優先した柔軟な提案

お父様の「面倒だ」という言葉から、私(行政書士)は、お父様が「手続きの複雑な」公正証書遺言をイメージされているのではないかと推測しました。

そこで、以下の状況を考慮し、ご相談者様を通じて「自筆証書遺言」を柔らかくお勧めすることを提案しました。

・財産が比較的少額でシンプルであること。

・時間の猶予があまりなく、迅速な対応が求められること。

・お父様の抵抗感を最小限に抑え、「書いてもらう」ことを最優先すること。

「財産もシンプルだから、面倒な手続きは必要ない。便箋に気持ちを込めて書くだけで大丈夫ですよ」という提案をしたところ、お父様は機嫌がよかったのか、すんなりと遺言書を作成してくださったとのことです。

内容は、「財産はすべて配偶者(母)に相続させる」という明確なものであり、遺言執行者もご相談者様(長男様)を指定されました。

まとめ:「ご家族の安心」を最優先する遺言書の選び方

この事例の「最適解」は、一般的に推奨される公正証書遺言ではなく、柔軟に作成できる自筆証書遺言でした。

遺言書作成において最も大切なのは、「ご本人の想いを実現し、残されたご家族の負担を最小限に抑える」という目的です。形式的な正しさも重要ですが、ご本人が抵抗なく作成でき、法的な要件を満たし、家族間の手続きがスムーズになるのであれば、それがそのご家族にとっての最良の方法なのです。

遺言書の種類(公正証書・自筆証書・その他)選びでお悩みの方は、ご家族の状況、財産状況、お気持ちを総合的に判断し、最も現実的でスムーズな「最適解」をご提案できる専門家にご相談ください。

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